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『刹那、バースデイ』アトガキ

このヨシ芳SSは、2.29御誕生日である某フォロワー様に差し上げたSSになります。
数か月前から構想を練っていた話なので、無事差し上げることが出来て、本当に
良かったです。

ヨシ芳と神芳は私的に書くのが難しいです。
特にヨシ芳は心情が難しい。正反対だからこそ惹かれ、また反発するんだろうなぁとか
色々考えてました。

余談ですが、今回のSS本で1番完成までに時間がかかったのが、
ヨシ芳SSでした。
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近況報告、SS進捗具合等

御久し振りです!2017年最初の更新が3.9となってしまいました。
忘れた頃にやってくる黒絵です←

ここ毎日イベント用の原稿を書きTづける日々&日々&日々という…(笑)
1回全てを見返し、誤字&脱字チェックをしても、もう1回見直すと
誤字&脱字を見つけの無限ループ……(どれだけ私は誤字脱字マンなんだ……)

すべての原稿が終わった!!!と思った矢先の朝5時に、新しい話を思いつき
プロットを書いていたら眠れなくなったり……(汗)
新しい話もこれまた知人様に送り、ただいま感想を待っている状態なので、
物凄く緊張しています(笑)

追加される話は芳野さんと石田君の話(この話はどちらかというと雨芳かな)
『透明な雨音』(とうめいなあまおと)です


自分は男性キャラ目線の方がSSが書きやすい気がするのですが、
どうしても芳野さん目線がおおくなりがちです(笑)

まだすべてが終わっていないのに、昨日は次回作のSSを書いたり、表紙ラフ案を
描いておりました(笑)次回作は狩矢様にスポットが当たった話が多くなると思います。

イベントまで頑張ります!

『刹那バースデイ』

桜の様に舞う粉雪が、外を銀世界に変えて行く。絶えず舞う白を見て、"あの日"を思い出す。
永遠を生きるアタシ達にとって、月日なんてどうでも良い事なのに。



『刹那、バースデイ』



紅茶色の暖炉、黒のテーブルとソファ、銀のパイプベッド。
必要最小限の物しか無い、色の無い殺風景な部屋。
普段は何がしかの声が聴こえるこの部屋も、
今夜だけは珍しく静寂に包まれていた。



藍色の長髪を持つ彼女は窓際に立ち、降り続く白をただ黙って見つめている。
翡翠色の美しい瞳は、白銀に色を塗り替えられた。

紅栗色の髪を持つ彼女はソファに座り、肩迄ある美しい髪に手櫛を入れながら、
ずっと藍色を観つめている。菫色の優しげな眼差しに、藍色の影が落ち、グラデーションがかかる。





『ゴーン…….、ゴーン……、ゴーン……』

古時計の鐘が鳴ると同時に、紅栗色は咲いながら言った。



「おめでとう」

「……何が……?」



言葉の意味が分からず、怪訝な顔をしているヨシを観て、芳野は更にクスクスと咲う。

紅い暖炉の火は、音を立て踊りながら、目の前の2人を観て口角を上げる。芳野はカレンダーを指差し、語る。



「2月28日、御誕生日。正確には2月29日、閏年だけどね」



彼女が何を言いたいのか、サッパリ分からない。
バウントには皆(みな)、"誕生日"等と言う言う"洒落た物"は無い。
"無い"というより、"知らなかった"という言い方の方が、半分正しいのかも知れない。
物心ついた時から、両親に気味悪がられ、出生について語られず、愛情なんて受けられ無かったんだから。

ーー其れに。不老不死のバウントにとって、自身の年齢、月日の流れ等、あって無い様な物なのだ。



『ガタタッ』雪風に、窓が揺れる。粉雪が、少しずつ乱暴になって行く。
変わり行く景色を眺めながら、ヨシは両眼を伏せ、ハァと溜息をついた。



「物心つく前に親に棄てられたんだ。

……今日よりもっと寒い、吹雪の日にね。

そんなアタシに誕生日なんて、気の利いたモンは無いよ。
ーー第一……。何で今日なんだよ?其れも、正確には2月29日って。
明日は3月だろ?何寝ボケた事言ってんだ」



いつも以上に眉間に皺を寄せ、不機嫌になる藍色に、紅栗色はそっと腰を上げ、向かう。

カツカツと、軽やかなヒール音が響く。



「ーー1年前の2月29日ね。私と貴女が、初めて心が通えた日なの。
今日よりうんと寒い、大雪の日だったわ……。
暗くて、とても静かな夜だったけど、凄く……暖かかったの。覚えてる?」



彼女は女性らしくしなやか指で、結露した窓に日付を刻む。色白の指先は悴(かじか)み、薄紅色に変わる。

「ーーシー……」悴んだ人差し指を、艶っぽい唇の上に充て、妖艶に咲う。
いつもの紅い口紅に、特別に差されたグロス。
その肉感的な唇は、何とも艶やかで。
ーーそう、息を潜めて、内緒話。だってアタシ達は、"共有"したからって。
菫に紅が反射した瞳が、アタシを離さない。その観詰めは、"あの夜"と全く同じ。

狡いだろ、そんなの、狡いよーー……。



ーー熱くて、甘かったな。



「……さぁ……?」



藍色は口角を上げ、また白銀に目を向ける。紅栗色は、美しく長い藍にそっと手櫛をかけ、
微熱を持つ頰に触れた。サラサラと流れ行く藍からは、紅栗と同じ、甘い百合の香り。



「……4年に1回しか無い、特別な日に触れ合えたの。ーーとっても素敵だと思わない?」

「…………」



多分彼女は、アタシが1番大好きな表情をしているのだろう。
菫色を少し伏せ、そこに紅を反射させ、穏やかに咲い、ほんの少しだけ口を開ける。
本当は今すぐにでも観たいけど、その表情は観たくても観れなかった。
観てしまったら、何もかもが込み上げて来てしまうから。



永遠を生きるバウントにとって、月日なんてどうでも良い事なのに。
彼女だけは人間の様に、その"どうでも良い事"を大切にしたがる。
閏年の事も昔、彼女から聞いた事があったが、
時が少しだけズレたからと言って、アタシ達の時計は最初から狂っているから。
「狂ってるアタシ達にとっては、一生関係無い事さ。心底下らない」と吐き捨てた。



その時の彼女は、少し寂しそうに笑い、「……そうよね」とだけ呟いた。
もう何年も前の出来事であるが、未だにあの笑みは思い出す。
色気の無いこの部屋に、桜色のカレンダーや、紅茶色の古時計を飾ったのは、彼女だった。
……何も、頼んでなんかいないのに。



永遠を生きるバウントに、誕生日、か。



窓に書かれた日付はもう消えていた。なんて儚いんだろう。
『キュッ、キュッ』2.29、筋肉質でしなやかな指で、日付を描(えが)く。

頰に添えられた手に、ゆっくりと力が加わる。翡翠と菫が交わった。



「"おめでとう"って言葉は、何かを成し遂げないと言って貰えないじゃない?
1年に1度、無事歳を重ねられた。……貴女が生きている限り、私は2月29日に"おめでとう"って、愛を囁くわ」



いつもより、より一層妖艶な、彼女の匂いがする。
フワフワと、百合とバニラと彼女自身が混ざった、アタシが大好きな匂い。
「…………」綻びそうになる口元を、キュッと噛み締める。
トクトクと、鼓動が跳ねる。熱い……。



「……あっそ」目を逸らし、ぶっきらぼうに答える藍色。
紅栗色はその様子にクスクスと笑いながら、ベッド付近にある戸棚に向かう。
戸棚の奥には、深紅の薔薇の花束があった。
その花束の中には、純白の封筒が入っている。
深い紅に穢れの無い白が、何とも映える。そんなの、いつ隠したんだよ……。
彼女が近付くに連れ、薔薇の香りが深くなる。



「ーー何……?」

「御誕生日プレゼント。私から、貴女への、ね」

「……花と手紙、ねぇ……」



古風と言うか、何と言うか。飾らない所もまた、彼女らしいか。
花束には、藍色のサテンリボン。……充分に足りている。でももう少しだけ、欲しい。

ーーだって今日は、誕生日だからーー……。



「ーーコレだけ?」

・・・・

「ーーコレと、もう1つ」



涼やかに咲うヨシに、芳野はそっと抱き着き、唇を重ねる。桜色の唇は、艶っぽい紅に変わる。深くて甘くて、熱かった……ーー。





「……出逢ってくれて、ありがとう」











プロフィール

黒絵

Author:黒絵
バウント篇萌えと色々創作サイト。
SSやイラスト等。

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